小山市立車屋美術館つづき
先日、伺った小山市立車屋美術館で「HANA」展を企画をされた中尾英恵さんからメールをいただいた。そのなかで興味深かったのが、寄神くりさんの作品についてのくだりであった。寄神さんはこの展覧会で、タピスリーの作品を出品しているが、私は展覧会に行く前にカタログを見た時からこの作品がかなり気になっていた。日本にもこういうアプローチをする人がいるのだなぁと感心したのである。どこに感心したかというと、タピスリーという物質にそなわる日常的な記憶を導き出す要素をうまく作品に取り込んでいるところであり、こうした手法はあまり日本で見ることはないような気がする。絵画や彫刻はそれぞれ物質ではあるには違いないのだが、素材そのものにパーソナルな経験を導き出すような性質が備わっているわけではない。プラスチックや100円ショップで売られているような素材を使う作家は少なくないが、そこからはエモーショナルな触覚体験を呼び起こすことはできない。これは石や木や葉っぱというような自然の素材をそのまま持ってくるということとも違うのだ。中尾さんからは、タピスリーは、工芸やデザインの要素が強いから美術作品として捉えるのが難しいという意見をいただくことがあるが私がどう考えるかというものであったが、寄神さんの作品は(多くの人が工芸やデザインという言葉から連想するような)技巧的で洗練された美しさを追求している訳ではないだろう。イメージを記号化し(これはタピスリーの持つ民族的な要素やヨーロッパで言えば中世の作品を連想させる効果もある)、そしてそのイメージ同士があえて連動しないように抑制された配置をするなどかなり巧妙な仕掛けもある。経歴を見るとオランダで学び、パリで在住とある。納得するところもあるが、ヨーロッパでも十分に個性的と評価されるであろう。(関)